幼稚園生の体験レッスン 〜優しく、厳しく〜

最近、新たに幼稚園生のレッスンを始めました。

体験レッスンでは、お話しして短時間レッスンしただけでしたが、お母様から「厳しくて優しい優意先生が好きなのと申しております」というメールをいただきました。まだ幼いのにほんの少しの、しかも初対面のレッスンでそんな感想が出るなんて、しっかりした観察眼を持ってやる気があるんだなぁと感心してしまいました。もちろん短時間でも細か〜く細か〜く何度も直しながら楽器と弓を持ってもらいましたよ。よくお話しを聞いてなんでも挑戦してくれました!

初めてヴァイオリンを習う方のレッスンは「子供のためのバイオリン教室」「新しいバイオリン教本」「篠崎バイオリン教本」「鈴木バイオリン教本」といった一般的な教本からスタートしていますが、漫然と教本の最初から順番にやっていくということはしていません。「今は何の技術を身につけるのか」と考えて課題を取捨選択しながら、教本に載っていないエクササイズ、基礎訓練も追加してレッスンしています。私がピアノを弾きながらそれに合わせて歌う、リズムをたたく、音符クイズなどバイオリンを弾く以外にもやれることはたくさんあります。「30分(または40分)レッスンは長くて大丈夫かしら…」というご質問もいただきますが、特にお子様の初めてのレッスンでは30分間ヴァイオリンを弾き続けるということはありません。ヴァイオリンを弾く以外にもできることはたくさんあって、30分では終わらないくらいです。

まずレッスン開始しばらくは準備の仕方だけでも教えることがたくさんあります。ケースからの出し方しまい方、弓の毛の張り方緩め方、松脂のつけ方、楽器や弓の拭き方、肩当てのつけ方…子どもがやるとあっという間に10分くらい経過します。これは次第に素早く準備できるようになります。

それからどのように立つのか、立つ場所、楽器の持ち方…まず音を出すまでに何ステップもある弦楽器ですが、徐々に慣れていく大切な導入部分です。ここの部分の根気強さはヴァイオリンらしいよい音や今後の上達に直結しますので、「その子らしい良い音を持ってもらいたい」という気持ちでレッスンしています。

これからたくさんの素敵な音色、音楽との出会いが待っていますように。


ヒビキアウ 〜広がる響き、それぞれの響き〜 オーケストラと共に響きあうインクルーシブコンサート

昨年の感想はこちらに書いていますが、今年も楽しみな公演になりました。個性が光る良い曲ばかりで、小編成ならではの響きを本当に間近にお聴きいただけます。文京シビックホールでお待ちしています!

■ 日時:01/18(日) 

公開リハーサル11:00-12:30   本公演14:00–15:30 

■ 場所:文京シビックホール 小ホール 

(東京都文京区春日1-16-21 丸ノ内線・南北線 後楽園駅(5出入口)直結 三田線・大江戸線 春日駅直結 JR水道橋駅(東口)徒歩10分)

■ 出演:Chamber Orchestra NEO  コンサートマスター 中村ゆか里 指揮 田中元樹

■ チケットhttps://teket.jp/11558/58112

「ヒビキアウ」は、未就学児や障害児の方、ワンオペ育児中の親子など、どなたでも安心して楽しめるインクルーシブなコンサートです。 「地ベタリアンスタイル」 により、ホールの座席を一部取り外し、演奏家と同じフロアで音楽を体感できます。立って自由に演奏するChamber Orchestra NEOが、モーツァルトの交響曲から若手日本人作曲家の新作まで幅広いプログラムをお届けします。 終演後には、オーケストラの演奏家や指揮者と直接交流いただける「ヒビキアイタイム」も予定しています。「こう聴かねばならない」「静かにじっとして聴く」というルールから少し自由になり、身体全体で音の響きを感じていただければと思います。どちらの公演も、会場と音楽が共鳴しあう特別な時間にしたいと願っております。 皆さまにお会いできることを、心より楽しみにしております。 

Neoclassical Collective  info@neoco.jp  https://neoco.jp/


弓が持てるようになった秘密

大人になってからヴァイオリンを習い始めた生徒さん。弓の持ち方は最初の難関ですが、レッスン開始2、3ヶ月くらいであっという間に少し良い感じに!お仕事もお忙しいのになぜこんなに早いのかしらと思って聞いてみたところ、メルカリでジャンク品の弓を1000円くらいで買ってリビングに出しっぱなしにしておき、いつでも触れるようにしているというのです。レッスンでは弓を持つためのいろいろな体操も教えていますが、夜、テレビやパソコン見ながらでもできるとのお話でした。

弓

意外なメルカリの活用法で感心しました。弓の代わりに鉛筆などで持ち方を練習する方法はありますが(鉛筆は鉛筆で弓より軽くて持ちやすいなどの利点はあります)、本物の弓にたくさん触れるためにはいいアイディアです。ヴァイオリンはさあ練習しようと思ったところで、弾くまでの準備が面倒に感じてしまうんですよね。ケースを開けて、弓出して、弓の毛張って、松脂つけて、いったん置いておいて、ヴァイオリン出して、肩当てつけて、さあ弓も持って、まずは調弦をしないと…となると、蓋を開けるだけで弾けるピアノに比べてどうしても腰が重くなります。生徒さんのアイディアは、出しっぱなしにしておいてなるべく触れる時間を増やすという点で成功していると思いました!

弓の正しい持ち方について、指のあてる場所、曲げ具合など、私が正しいことを細かく説明することはできます。それを頭で理解しても、それを身につけ、自在に操れるようになるには「慣れ」が必要ですので、弓に触れる時間を確保する工夫が素晴らしいと思いました。


マルシェ弦楽四重奏団2025終演

今回特に選曲の意味を自分なりに考え抜いたので、聴いてくださった方に伝えることができたのではないかと思います。同じ空間で音楽を私たちと共有してくださった皆様、本当にありがとうございました。

曲について考えていく過程を文章にまとめて公開してみたのも、私にとっては初めての試みでした。頭の中では普段から考えているつもりでしたが、文章にまとめて公開するとやはり自分の意識は変わります。お読みいただいた方、ありがとうございました。

マルシェ弦楽四重奏団では、来年もアウトリーチ、コンサートなどの予定が継続してございます。今後も私たちの活動に関心を寄せていただけると嬉しいです。


10月マルシェ弦楽四重奏団主催公演にむけて<4・五木の子守唄、アンダンテカンタービレ>

五木の子守唄

この曲は熊本県球磨郡五木村に伝わる民謡です。五木村は熊本県の南部の内陸の山間部にある、平家の落人伝説のある小さな村。この歌は子守をする少女が、自分の不幸な境遇などを自ら慰めるために歌った歌です。かつて小作人の少女たちは、家が貧しく、「口減らし」のために奉公に出されることが多くありました。

五木村

哀愁を帯びた物悲しいメロディーです。私は聴きながらガーシュウィンのオペラ「ポーギーとベス」より「サマータイム」を思い出しました。貧しいアフリカ系アメリカ人の主人公が赤ん坊をあやしながら歌うブルースです。ブルースも成り立ちを考えるとアフリカ系アメリカ人の「民謡」とも言えるジャンルですから、日々の暮らしに心情を歌詞にこめて歌っていたという共通点があるのかもしれません。

コンサートでは幸松肇氏が編曲した「弦楽四重奏のための日本民謡集」より演奏します。これまでにマルシェ弦楽四重奏団ではこの民謡曲集から「ソーラン節」「茶っきり節」「鹿児島おはら節」などいくつかをコンサートやアウトリーチで演奏してきました。日本土着の民謡の響きそのままというよりは、西洋の楽器、西洋の響きも活かした新しいアレンジになっていると感じます。

アンダンテ・カンタービレ

この曲は、ロシアの作曲家チャイコフスキー(1840-1893)によって1871年に作曲された「弦楽四重奏曲第1番ニ長調作品11」の第2楽章です。美しい旋律が大変有名で、いろいろな楽器に編曲されたり、今回のコンサートのように単独で演奏されることも多いです。

チャイコフスキー

チャイコフスキーは若い頃に民謡の採譜にも取り組み、その成果は「50のロシア民謡曲集」(1869年:弦楽四重奏曲第1番の作曲時期に近い)といった形でまとめられました。そうした活動の影響でしょうか、初期のチャイコフスキーの作風は民族的な要素を採り入れた作品が多かったと言われています。 弦楽四重奏曲第1番は、彼の創り出す豊かな旋律と情感溢れる表現力が際立っており、ロシアの伝統的な音楽と西洋のクラシック音楽を融合させた作品として評価されています。

第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」も民謡を元にしていると言われていますが、具体的にどの民謡なのかについては諸説あるようです。 その一つが、冒頭部分のテーマがウクライナのカメンカで聴いた民謡を元にしているのではないか、というものです。
カメンカはチャイコフスキーの妹の嫁ぎ先で、1870年代にはチャイコフスキーが頻繁に訪れていたということです。

今回の記事でご紹介した2曲はどちらも民謡が元になっており、素朴ながら胸に迫る旋律が印象的です。コンサートでは、人々の心の中に大切に伝わってきた「うた」を弦楽四重奏の響きでお楽しみください。

【2025/10/13追記】

全4回にわたって全てのプログラムを眺めてみますと、パーセルはイギリスの、五木の子守唄は日本の、チャイコフスキーはスラブの、リゲティはハンガリーの、シューベルトは南ドイツ・オーストリアの、”それぞれの文化・伝統・メロディー” が豊かに表現された曲ばかりです。長い歴史の中で人々によって受け継がれてきたもの、それを弦楽四重奏曲という形で残してくれた作曲家のそれぞれの「歌」がお聴きいただく皆様の心に届きますようにと思って演奏しました。

🎵コンサートの詳細は以下のページをご覧ください🎵

2025/10/12 マルシェ弦楽四重奏団2025  〜響きあう・うた〜


いよいよ1ヶ月後〜10月マルシェ弦楽四重奏団主催公演にむけて<3・パーセル>

来月に向けてリハーサルにも力が入ってまいりました。リハーサルの音源から、ちらっとパーセルのファンタジアがお聴きいただけます。

ヘンリー・パーセル(1659年 -1695年)はイギリス生まれ、ウェストミンスター寺院のオルガニスト、王室楽団の作曲家として活躍しました。伝統の上に新様式を盛り込み、英国音楽に新風を吹き込んだバロック時代の作曲家です。

16世紀から17世紀初頭にかけて、イギリスではヴィオールの合奏がもてはやされ、同時代に活躍したイギリスの作曲家たちはこのレパートリーのための音楽を残しました。パーセルも3声から7声まで多彩なヴィオールの作品を作曲しています。

「4声のファンタジア」とある通り、後にハイドンによってヴァイオリン2本、ヴィオラ、チェロによる弦楽四重奏のスタイルが確立される以前の曲です。元々はヴィオール属(ヴィオラ・ダ・ガンバ)のために書かれました。

こういう楽器ですね。厳密には細かい違いがあるためヴァイオリン属の先祖とは言えないようです。

弦楽四重奏という形式が確立された後の曲より、4つの楽器の役割分担が明確ではなく、一つのものを自由に4人で紡ぎ出すような面白さを感じます。10/12のコンサートでは、この曲から演奏をスタートし、いろいろな「うた」が広がっていきます。


10月マルシェ弦楽四重奏団主催公演にむけて<2・リゲティ>

杉並公会堂にもポスターが掲示されました

シューベルトの大曲と共にプログラムのメインとなるのがリゲティの弦楽四重奏曲。こちらも以前からマルシェの中でやりたい曲としてあがっており、数年前に楽譜も購入してあった曲です。

リゲティは現代音楽の巨匠として大変有名で名前を聞く機会も多いものの、私個人は演奏機会はありませんでした。10年以上前にホルン三重奏曲を聴いて難解に感じつつも興味惹かれる部分がたくさんあったことを覚えています。

リゲティについて

ジェルジュ・リゲティ(1923年5月28日 – 2006年6月12日)は、ルーマニアでユダヤ系ハンガリー人として生まれ、ハンガリー動乱がソ連に鎮圧された1956年にオーストリアに亡命。スタンリー・キューブリック監督は映画『2001年宇宙の旅』、『シャイニング』、『アイズ ワイド シャット』などでリゲティの音楽を使用したため、その音楽はクラシック音楽を越えて広く知られるようになりました。

第二次世界大戦の折には、家族はバラバラに強制収容所に入れられ、父はアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所で、弟はマウトハウゼン強制収容所で命を落としています。その後ソ連抑圧下のハンガリーで過ごし、ハンガリー動乱の際には、銃撃を避けてハンガリーとオーストリアの国境に広がる湿地帯を通り抜けて亡命するなど、政治的に厳しい状況に置かれました。

夜の変容

弦楽四重奏曲第一番は「夜の変容」という副題がついており、不穏な雰囲気、抒情的な旋律など変化に富んだこの作品の性格を表していると言えるでしょう。ハンガリーがソ連抑圧下にあった1954年に作曲されました。31才という若い時の作品ですが、当時のハンガリーは大戦後の西側の実験的な音楽の情報が入ることもなく隔絶されており、独創的な音楽になっています。この頃リゲティはハンガリーの先人バルトークの音楽を理想とし、ハンガリーの民謡を元に作曲をすることもありましたが、社会主義リアリズムが蔓延するハンガリー当局から演奏を禁止されており、非公開のままになる曲も多くありました。この曲も亡命後の1958年にウィーンで初演されています。

演奏にあたって

録音を聴いたりスコアを見ると「弦楽四重奏としての技巧」が要求されることがわかります。テンポや拍子がよく変わる、「伝統的な和声音楽」ではないため4人で音程があっているのかわかりづらい、歯車のようにカチッと噛み合ってこそかっこいいと感じるところも多い、早いパッセージやグリッサンドも多い、特殊奏法も多い・・・それらをどのように扱って歌にまで昇華するか。冒頭から曲全体を支配しているような半音階進行から始まり、次第にメロディが導き出されてきます。ユーモアがあったり、怪しげだったり、痛みを感じるようだったり、リゲティならではの「うた」が浮かび上がってくるような演奏ができればと考えています。

今回演奏するシューベルトの半分ほどの長さの曲ですが、練習を始めた当初はとてつもなく長く感じました。リハーサルと重ねてくると次第に短く感じられるようになり、ようやく最後まで行けそう!という気持ちになりつつあります。「数学的な楽譜」とそこから聞こえてくる「豊かな響き」のギャップが面白いところです。多彩な音色で夜を表現し、最後は静かに消えていきます。


マルシェ弦楽四重奏団主催公演にむけて<1・シューベルト>

10/12の公演まで2ヶ月を切りました

まだまだ暑い日が続いていますが、少しずつこちらの公演の日が近づいてきます。

プログラムの企画意図については、マルシェ公式サイトチケット販売サイトYouTubeなどにも投稿しています。ご一読いただけると嬉しいです。

弦楽四重奏のための曲は、特別なクラシック音楽愛好家でなければなかなか知らないものが多いのではないでしょうか。プログラムの曲目だけでパッと人目を惹きつけるのはなかなか難しいジャンルですが、コンサートで一度聴いていただけると、その後何回も聴いていただけるようになることも多いです。4人という小さくて密接なやり取りをすぐ間近で聴くのは、とても印象的で心に響く体験です。感情がダイレクトに伝わってくる気がします。

これからリハーサルで詰めていき、YouTubeなどでも少しお聴きいただけるようにしようかなと計画中ですので、こちらも覗いてみてください。ぜひコンサートでもお待ちしています。

曲の理解をより深めたいと思って調べたり考えたりしたことを少しずつこちらに書いていこうと思います。今回は「響きあう・うた」というテーマを掲げていますので、プログラムにある一見バラバラな曲たちがどのようにテーマと関わり合っているのかを念頭に置きながら書いていきます。こちらのブログを続けてお読みいただけると、これらの曲をまとめて聴く意味を感じていただけるのではないでしょうか。上に挙げた公式サイトのようなところは正確さに拘りどうしても無難な内容になりがちですので、ここには全くの私の個人的な考えを綴りたいと思います。

シューベルト

シューベルト

この弦楽四重奏曲第15番は私が長年演奏したいと思っていた曲で、プログラムに入れるチャンスをずっと窺っていました。

シューベルト(1797-1828)はオーストリアの作曲家で、オペラ、ミサ曲、交響曲、室内楽、ピアノ曲といった幅広い作品を残しました。「魔王」「冬の旅」をはじめ600曲を超える歌曲を作り、「歌曲の王」として名高い作曲家です。

この曲は生涯に作曲した15曲の弦楽四重奏曲の最後の作品で、亡くなる2年前、最晩年の作品です。

過去に弦楽五重奏曲なども演奏したことがありますが、この人の曲はとにかく長い!同じリズムを延々と繰り返しながら、その中にあっと驚く独創的な転調を次々に積み重ねていき、それが積み重なった先にはとんでもない壮大な景色が見える・・・それがこの曲の一番の魅力だと思います。振り返ってみると延々とモチーフが繰り返される長さは、この景色を見るためには必要なものであるのかもしれません。途中の楽章には、牧歌的なところもあったり、歌曲を思わせるようなドラマチックな部分があったりもします。

作曲家は歴史的に古くは王侯貴族に雇われていた身分でしたから、王の要望に沿って宮廷で使われる音楽をたくさん書いていました。シューベルトの弦楽四重奏曲はそのようなパトロンの依頼で作曲されたのではなく、個人的な楽しみのためとか(シューベルトはヴィオラを弾きました)、純粋に音楽的な欲求によって作曲されています。個人的な感情や思いの丈を曲に発散させているように感じられるのです。スコアを見て複雑な和声の変化を勉強しながらも、次第に身近に感じて自分の人生や日々の生活とただただ重ね合わせて弾く・・・そんな気持ちになることもあります。きっとお聴きいただく方にも難しい解説は横に置いておいて、ただこの曲も世界に浸っていただけるのではないでしょうか。

コンサートの詳細はこちらのページをご覧ください。