マルシェ弦楽四重奏団2025終演

今回特に選曲の意味を自分なりに考え抜いたので、聴いてくださった方に伝えることができたのではないかと思います。同じ空間で音楽を私たちと共有してくださった皆様、本当にありがとうございました。

曲について考えていく過程を文章にまとめて公開してみたのも、私にとっては初めての試みでした。頭の中では普段から考えているつもりでしたが、文章にまとめて公開するとやはり自分の意識は変わります。お読みいただいた方、ありがとうございました。

マルシェ弦楽四重奏団では、来年もアウトリーチ、コンサートなどの予定が継続してございます。今後も私たちの活動に関心を寄せていただけると嬉しいです。


10月マルシェ弦楽四重奏団主催公演にむけて<2・リゲティ>

杉並公会堂にもポスターが掲示されました

シューベルトの大曲と共にプログラムのメインとなるのがリゲティの弦楽四重奏曲。こちらも以前からマルシェの中でやりたい曲としてあがっており、数年前に楽譜も購入してあった曲です。

リゲティは現代音楽の巨匠として大変有名で名前を聞く機会も多いものの、私個人は演奏機会はありませんでした。10年以上前にホルン三重奏曲を聴いて難解に感じつつも興味惹かれる部分がたくさんあったことを覚えています。

リゲティについて

ジェルジュ・リゲティ(1923年5月28日 – 2006年6月12日)は、ルーマニアでユダヤ系ハンガリー人として生まれ、ハンガリー動乱がソ連に鎮圧された1956年にオーストリアに亡命。スタンリー・キューブリック監督は映画『2001年宇宙の旅』、『シャイニング』、『アイズ ワイド シャット』などでリゲティの音楽を使用したため、その音楽はクラシック音楽を越えて広く知られるようになりました。

第二次世界大戦の折には、家族はバラバラに強制収容所に入れられ、父はアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所で、弟はマウトハウゼン強制収容所で命を落としています。その後ソ連抑圧下のハンガリーで過ごし、ハンガリー動乱の際には、銃撃を避けてハンガリーとオーストリアの国境に広がる湿地帯を通り抜けて亡命するなど、政治的に厳しい状況に置かれました。

夜の変容

弦楽四重奏曲第一番は「夜の変容」という副題がついており、不穏な雰囲気、抒情的な旋律など変化に富んだこの作品の性格を表していると言えるでしょう。ハンガリーがソ連抑圧下にあった1954年に作曲されました。31才という若い時の作品ですが、当時のハンガリーは大戦後の西側の実験的な音楽の情報が入ることもなく隔絶されており、独創的な音楽になっています。この頃リゲティはハンガリーの先人バルトークの音楽を理想とし、ハンガリーの民謡を元に作曲をすることもありましたが、社会主義リアリズムが蔓延するハンガリー当局から演奏を禁止されており、非公開のままになる曲も多くありました。この曲も亡命後の1958年にウィーンで初演されています。

演奏にあたって

録音を聴いたりスコアを見ると「弦楽四重奏としての技巧」が要求されることがわかります。テンポや拍子がよく変わる、「伝統的な和声音楽」ではないため4人で音程があっているのかわかりづらい、歯車のようにカチッと噛み合ってこそかっこいいと感じるところも多い、早いパッセージやグリッサンドも多い、特殊奏法も多い・・・それらをどのように扱って歌にまで昇華するか。冒頭から曲全体を支配しているような半音階進行から始まり、次第にメロディが導き出されてきます。ユーモアがあったり、怪しげだったり、痛みを感じるようだったり、リゲティならではの「うた」が浮かび上がってくるような演奏ができればと考えています。

今回演奏するシューベルトの半分ほどの長さの曲ですが、練習を始めた当初はとてつもなく長く感じました。リハーサルと重ねてくると次第に短く感じられるようになり、ようやく最後まで行けそう!という気持ちになりつつあります。「数学的な楽譜」とそこから聞こえてくる「豊かな響き」のギャップが面白いところです。多彩な音色で夜を表現し、最後は静かに消えていきます。


マルシェ弦楽四重奏団主催公演にむけて<1・シューベルト>

10/12の公演まで2ヶ月を切りました

まだまだ暑い日が続いていますが、少しずつこちらの公演の日が近づいてきます。

プログラムの企画意図については、マルシェ公式サイトチケット販売サイトYouTubeなどにも投稿しています。ご一読いただけると嬉しいです。

弦楽四重奏のための曲は、特別なクラシック音楽愛好家でなければなかなか知らないものが多いのではないでしょうか。プログラムの曲目だけでパッと人目を惹きつけるのはなかなか難しいジャンルですが、コンサートで一度聴いていただけると、その後何回も聴いていただけるようになることも多いです。4人という小さくて密接なやり取りをすぐ間近で聴くのは、とても印象的で心に響く体験です。感情がダイレクトに伝わってくる気がします。

これからリハーサルで詰めていき、YouTubeなどでも少しお聴きいただけるようにしようかなと計画中ですので、こちらも覗いてみてください。ぜひコンサートでもお待ちしています。

曲の理解をより深めたいと思って調べたり考えたりしたことを少しずつこちらに書いていこうと思います。今回は「響きあう・うた」というテーマを掲げていますので、プログラムにある一見バラバラな曲たちがどのようにテーマと関わり合っているのかを念頭に置きながら書いていきます。こちらのブログを続けてお読みいただけると、これらの曲をまとめて聴く意味を感じていただけるのではないでしょうか。上に挙げた公式サイトのようなところは正確さに拘りどうしても無難な内容になりがちですので、ここには全くの私の個人的な考えを綴りたいと思います。

シューベルト

シューベルト

この弦楽四重奏曲第15番は私が長年演奏したいと思っていた曲で、プログラムに入れるチャンスをずっと窺っていました。

シューベルト(1797-1828)はオーストリアの作曲家で、オペラ、ミサ曲、交響曲、室内楽、ピアノ曲といった幅広い作品を残しました。「魔王」「冬の旅」をはじめ600曲を超える歌曲を作り、「歌曲の王」として名高い作曲家です。

この曲は生涯に作曲した15曲の弦楽四重奏曲の最後の作品で、亡くなる2年前、最晩年の作品です。

過去に弦楽五重奏曲なども演奏したことがありますが、この人の曲はとにかく長い!同じリズムを延々と繰り返しながら、その中にあっと驚く独創的な転調を次々に積み重ねていき、それが積み重なった先にはとんでもない壮大な景色が見える・・・それがこの曲の一番の魅力だと思います。振り返ってみると延々とモチーフが繰り返される長さは、この景色を見るためには必要なものであるのかもしれません。途中の楽章には、牧歌的なところもあったり、歌曲を思わせるようなドラマチックな部分があったりもします。

作曲家は歴史的に古くは王侯貴族に雇われていた身分でしたから、王の要望に沿って宮廷で使われる音楽をたくさん書いていました。シューベルトの弦楽四重奏曲はそのようなパトロンの依頼で作曲されたのではなく、個人的な楽しみのためとか(シューベルトはヴィオラを弾きました)、純粋に音楽的な欲求によって作曲されています。個人的な感情や思いの丈を曲に発散させているように感じられるのです。スコアを見て複雑な和声の変化を勉強しながらも、次第に身近に感じて自分の人生や日々の生活とただただ重ね合わせて弾く・・・そんな気持ちになることもあります。きっとお聴きいただく方にも難しい解説は横に置いておいて、ただこの曲も世界に浸っていただけるのではないでしょうか。

コンサートの詳細はこちらのページをご覧ください。